「冗談半分ね」
……だよね。
冗談、だよね。
だって、先生の大切な人は他にいる。
その事実が、ドキドキと高鳴っていた胸を、ちくりと刺した。
「でも、吉岡さんが誰かに取られるのを、黙って見てるわけにはいかないからさ」
さらっと、何でもないことのように言う。
「なっ……」
言葉に詰まる。
「またそうやって先生は……。患者さん相手に、そんなこと言っていいんですか」
揶揄われていると分かっているのに、心のどこかで嬉しいと思ってしまっている自分が、もうどうしようもなかった。
強がってそう言うと、先生は少し楽しそうに目を細める。
「梅木さんなら、大丈夫」
それから一歩だけ距離を詰め、低い声で続けた。
「それに……本当のことだし」
心臓が、うるさい。
顔が熱を持つのがわかる。
「やめてください……仕事中なので」
必死に平然を装って抗議する。


