「あ、あの……せんせ?」
「……元気そうで、よかった」
それだけ言って、先生はようやく一歩引いた。
び、びっくりした……。
気づかれないように、そっと息を吐く。
先生の距離感は、たまにおかしい気がする。
ふいに、貧血を起こしたときの、先生に抱き抱えられて運ばれた感覚が鮮明によみがえった。
思い出すだけで、顔が熱くなる。
「じゃあ、ちゃんと休んで。無理しないように」
それだけ言って、先生は先に歩き出す。
意外とあっさり行ってしまうんだ……
なんて、え、私、がっかりしてる……?
そんな自分に少し戸惑う。
先生の背中が角を曲がって見えなくなるまで、私はその場から動けずにいた。
ほんの数分の出来事だったのに、心臓だけがやけに騒がしい。


