彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません


 なんで私、こんなに緊張してるんだろう。 
 縮まった距離に脈が加速する。

 「先生も当直だったんですね」

 何か話さなければと、ストレートティーを取り出しながら声をかけた。その動作さえも、不自然だったんじゃないかと不安になる。

 「うん、俺も休憩」

 そう言って、先生はブラックコーヒーのボタンを押した。
 ガシャン、と缶コーヒーが落ちる音が、やけに大きく響く。

 自販機の稼働音だけが、静かな空間を満たしていた。

 先生は缶コーヒーを片手に、そっと、私との距離を詰める。

 「……顔色、大丈夫そうだね」

 確かめるように落とされた視線。

 ——近い。

 息が、うまく吸えなかった。
 思わず息を止めた私に気づいたのか、先生は一瞬だけ眉をひそめた。

 「……あ、ごめん」

 そう言いながらも、すぐには離れなくて。

 自販機の明かりに照らされた眼鏡越しの視線が、逃げ場を失った私をまっすぐ捉えていた。

 先生は、何を考えているんだろう。

 ただの確認だと分かっているのに、
 視線が外れないことが、どうしようもなく意識させられる。