彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません



 体調がすっかり回復した私は、翌週の夜勤に入っていた。

 深夜ニ時。

 ナースステーションの明かりとモニター音だけを残して、病棟は静まり返っている。

 「吉岡さん、なにかやっておくことある?」

 「いえ、大丈夫です。じゃあ休憩入りますね」

 夜勤リーダーに声をかけて仮眠休憩に入るため仮眠室に荷物を運ぶ。

 この時間帯の夜勤は、独特の静けさがある。

 急変が起きるわけでもなく、かといって、完全に気が抜けるわけでもない。
 巡回を終え、眠っている患者さんたちを確認できて、ようやく少しだけ肩の力が抜けた。

 もう8年目になり、数えきれない程夜勤をしてきた。元々怖がりな私でも、さすがに平気なはずなのに、暗闇を一人で歩く時はなぜか心細さだけが残っていて、無意識のうちに自分の足音を確かめるように歩いていた。

 そうだ。
 仮眠前に、飲み物を買ってこよう。

 仮眠前に飲み物を買っておかないと、あとで絶対後悔する。私の中の夜勤あるあるだ。

 「ちょっと下行ってきます」

 「はーい、いってらっしゃい」

 残っているメンバーに声をかけ、ナースステーションを抜けてエレベーターに乗り、1階にある自販機のたくさん並ぶスペースに向かった。