「大丈夫じゃないだろ。ちょっと休憩室に運ぶよ」
そう聞こえたかと思った瞬間、身体がふわりと浮いた。
その場にいた全員が息を呑んだのか、ナースステーションは一瞬、静まり返った。
「森さん、休暇室のドア開けてくれる?」
「は、はいっ」
頭上から瀬名先生の声が振ってきて、恵理が走っていく。
「あ、あの、先生っ大丈夫です、歩けます」
突然の出来事で、まだ頭追いついていない。
それでも羞恥心と申し訳なさが込み上げてきた。
「いいから、大人しく運ばれて」
「す、すみません………」
申し訳なさで、声が小さくなる。
ドクンドクンと速く打つこの脈は、私のもの?それとも……先生?
「おろすよ」
そう言われて、そっと休憩室のソファに寝かされた。
「大丈夫?熱は……なさそうだね」
なんの戸惑いもなく、私のおでこに手を当てる先生。
当たり前だ。
医者なのだから。
その距離が近すぎて、息の仕方を忘れそうになる。
「貧血かな?疲れが溜まってるんだろう」
そう言いながら、今度は私の手首に触れて脈をみる。
恵理ちゃんが「掛け物持ってきます!」と休憩室を出て行き、部屋には私と先生だけが残った。


