彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません


 「えっと……血圧が少し下がってましたけど、今は安定してます。ただ、尿量が減ってきて浮腫みが増してきてるようです」

 「そうか。じゃあ輸液、少し調整しよう」

 ただの業務連絡。
 そう思っているのに、なぜか胸の奥が小さく波打つ。

 先生の視線が、私から離れない。

 「大丈夫?」

 「え、はい……」

 「無理してない?」

 一瞬、言葉に詰まる。

 「……大丈夫です」

 本当は少しだけ、意識が遠のくような感じがした。立ちっぱなしだったからだろうと思う。
 でも、それを口に出す理由が見つからなくて、私は笑ってごまかした。

 「ひよりー!行くよー」

 ひと足先に電カルのワゴンを押しながら廊下に出て行く恵理ちゃんに呼ばれた。

 「あ、はーい!」

 そう返事をして、点滴をのせたバットを持って一歩踏み出した。

 その瞬間ーー

 ガシャンッ。

 「吉岡さん!」

 「え!ひより!?」

 一瞬、目の前が真っ暗になりその場に座り込んだ。その際に点滴をバットごと落としてしまったみたいだ。

 「だ、大丈夫です……すいません」

 そう言って、これ以上騒ぎにしないように、ゆっくり立ちあがろうとした。