「先生、それはどうかと思います。大切な人がいらっしゃるのに、他の人をデートに誘うなんて」
「はは、うん。まあ、そうだね。じゃあ言い方を変えて。……また、こうやって話を聞いてほしいんだ。誰かに話せたの、吉岡さんが初めてだからさ」
急降下からまたゆっくりと浮上させる。
ああ、もう。
そんなこと言われたら断れるわけないじゃないですか。
「デートじゃなくて、話を聞くだけなら……」
「よかった。ありがとう」
そう言って笑った先生の笑顔に、胸がトクンと跳ねた。
もう、これ以上近づいちゃだめなはずなのに。
そう思っているのに。
どうして私は、先生をほっとけないのだろう。
「今日はありがとう。少し、楽になったよ」
そう言って、先生は立ち上がる。
「そろそろ帰ろっか。お互い、ちゃんと休まなきゃね」
その言葉に、なぜか少しだけ寂しさを覚えながら、私も立ち上がった。
歩き出す背中を見つめながら、
——これ以上、先生に惹かれたら……
きっと、戻れなくなる。
それでも。
それでも、もう少しだけ。
先生のそばにいたいと思ってしまった自分が、切なくて、苦しくて、くすぐったくて、どうしようもなかった。


