彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません



 「ある事故で、記憶喪失になってしまったんだ。
 ……俺のことだけ、ね」

 そう話す先生が、いつものキラキラしたチャラい瀬名先生とは思えなくて、すごくすごく小さく感じて、無性に抱きしめたくなった。

 「だから、脳神経外科を選んだ。記憶を取り戻せるかもしれないって、俺、結構かけてたんだよね」

 でもさ、と先生は続ける。

 「無理だった。どれだけ脳神経のこと学んだって、その人の記憶は取り戻せなかった」

 胸の奥がきゅうっと軋む。

 「……それでもさ、元気でいてくれればよかったんだ。でも、」

 また先生は私に視線を戻す。

 「また欲しくなるんだよね」

 先生はそう言って、少しだけ困ったように笑った。

 まるで、その人を目の前にしているかのように。愛しいという想いが滲む、優しい眼差しで。


 「忘れられても、思い出してもらえなくても、それでも……俺の気持ちだけは消えなくてさ」