彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません



 翌日のよく晴れた午後。

 記念日に合わせて選んだ淡いベージュのワンピースの裾を、無意識に指先で整えながら、

 私は目の前の状況を飲み込めないでいた。


 今日は彼、田代祐一(たしろゆういち)との2年記念日で、ここ、ディスティーノメモリアに宿泊してお祝いする予定だ。

 ホテルロビーの高級感漂う上品なソファにテーブルを挟んで、お互い向き合ったかたちで座っている。

 そこまではなにも問題はないのだけど、彼の横に強張った顔で一人の女性が座っている。

 さっきから心臓の音が乱れてしかたない。

 嫌な予感だけが、じわじわと胸の奥に広がっていく。

 「ゆうくん、あの、この方は・・・?」

 平静を装うも、声は震えそうになる。

 「ひより・・・・・・ごめん。本当にごめんっ」

 ゆうくんが深く頭を下げた。

 嫌だ。聞きたくない。
 
 「彼女は僕の会社の後輩で、佐藤あかりさん。彼女の・・・お腹に・・・・・・・・・僕の子が、いるんだ」

 ガンッと鈍器で頭を思い切り殴られたような衝撃だった。目の前の二人は俯いたまま、ゆうくんは深く頭を下げている。

 息が詰まった。呼吸するのを忘れていたと思う。

 目の前で頭を下げるふたりをボーッと見つめたまま必死で頭を回転させて、彼に言われた言葉をやっと理解した。


 だけど、ショックで何も言えなかった。

 言葉が見つからなかった。


 「・・・・・・・・・そう、なんだ。・・・・・・お幸せに」


 気づいた時には口が勝手にそんなことを言っていた。