彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません


 帰り道。

 影が自然と並んで伸びる。

 不意に、先生が立ち止まった。

 「……ひよ、吉岡さん」

 「?」

 今、名前で呼ぼうとしたのかな。

 「……ごめん。今のは危なかった」

 「何がですか?」

 「距離感」

 口調は軽いし笑っているのに、何かを堪えるような目で。

 「また、誘ってもいい?」

 「……はい」

 ほんの一瞬戸惑ったけど、そう答えていた。

 嫌じゃないと思ったし、また次があることをどこか嬉しく感じている自分がいる。

 先生は満足そうに口角を上げた。

 「よし。じゃあ次はもっとチャラくいこうかな」

 「それ以上は困ります」


 ははっと前を向いて笑った先生。

 その声に、後ろ姿に、
 なぜか胸の奥がきゅっと締めつけられた。

 初めてのはずなのに、
 昔から知っている人みたいで。

 わからないのに、懐かしい。

 その感覚が、少しだけ怖くて、
 でも、目を逸らすことができなかった。