サイレンの音が近づいてくる。
梅木さんの呼吸を確認しながら、時間の感覚が少しずつ曖昧になっていく。
ほんの数分のはずなのに、やけに長く感じた。
救急車が到着し、隊員が素早く状況を引き継いでいく。
瀬名先生は簡潔に状態を説明し、そのまま処置の流れに入った。
そのやり取りも、すべてがスムーズで無駄がない。
ストレッチャーに乗せられた梅木さんが運ばれていく。
その後ろ姿を見送りながら、ようやく息を吐いた。
「……さっきまで、元気だったのに」
こぼれた声は、自分でも驚くほど弱かった。
「大丈夫。あの状態なら、間に合う」
隣から落ちてくる声は、変わらず落ち着いている。
その横顔を見て、ふと思う。
さっきまで冗談を言いながら笑っていた人と、同じ人とは思えないくらい。
先生がいてくれてよかった……。
そう思ったはずなのに、その安心はすぐに別の感情へと変わっていく。
普段とはまた違う、先生の芯に触れた気がして、胸が大きく揺さぶられる。
この人のこと、ちゃんとしなくちゃ。
今のままじゃ、だめだ。


