彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません


 「まあ……そんなところです」

 さらっと返す声に、一瞬遅れて意味を理解して、思わず先生の腕を掴む。

 「先生っ」

 「あらぁ〜いいわねぇ。素敵だわ。若いっていいわねぇ」

 梅木さんはうっとりと頬に手を当てて、それからカフェの方をちらりと見た。

 「そこのアップルパイ、本当に美味しいのよ。私も散歩がてら、よく食べに来るの。せっかくだから食べていきなさいよ」

 いつも通りの調子に、少しだけ肩の力が抜ける。

 ついさっきまで胸にあった重さが、ほんの少しだけやわらいだ気がした。

 「ありがとうございます。あとで――」

 そう返しかけた、そのときだった。

 ふっと、梅木さんの表情が止まる。

 違和感に気づいた瞬間、梅木さんの身体がわずかに揺れた。

 次の瞬間、力が抜けるように崩れ落ちる。

 「梅木さん!」