彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません


 その音をごまかすように、慌ててシートベルトに手をかける。

 これ以上ここにいたら、何か言ってしまいそうで。

 「わ、わざわざ送っていただいて、ありがとうございました。それでは」

 軽く頭を下げてドアに手をかけた瞬間、背後から名前を呼ばれて思わず足が止まる。

 「ひより」

 振り返ると、瀬名先生は穏やかな表情のままこちらを見ていた。

 「明日、休み?」

 一瞬言葉に詰まりながらも、小さく頷く。

 「……はい」

 そう答えると、先生はわずかに目を細めて、どこか楽しそうに口元を緩めた。

 「じゃあ、明日も俺に時間ちょうだい」

 「……え」

 戸惑いを隠せないまま見返すと、ふっと軽く笑われる。

 「もう遠慮しないって言ったでしょ」

 言い方はいつも通り柔らかくて軽いのに、その奥にある迷いのなさに気づいた瞬間、胸の奥が強く打ち鳴らされた。