手にしていたハサミは閉まったのか、どこにも見当たらない。代わりに彼の両手は、ぶにーっと。まるで感触を楽しむよう、何度も私の頬をつかんだ。 「さ、咲人さん?」 「……へたくそ」 「?」 不思議に思って首を傾げると、咲人さんは〝私が傾げた方とは反対側へ〟頭を倒す。そのまま私へ近づき、何をするかと思えば、 「キスの練習、するから」 「ん――!」 熱い唇を、これでもかと私に押し当てた。