買い物を済ませた後は
車で最寄りの天野駅に向かった。
天野駅には駐車場が2ヶ所ある。
駅の隣に100台ほど停められる駐車場と
少し離れたロータリーのはずれにある駐車場。
ニュータウンかなえの住人は
駅の隣の駐車場をよく使っていた。

お世辞でも運転が上手いとはいえない佳乃子は
ロータリーのはずれにある駐車場を
定位置として使っていた。
駅横の駐車場がいっぱいにならない限りは
誰も使わない。
佳乃子にとっていつも使える安心の駐車場なのだ。

いつもの駐車場に向かうが
赤いミニバンが停まっていた。

ーーあら、珍しい。
駐車場がいっぱいなのかしら。

駅前駐車場に目を向けるが、
数台停まっているだけだった。

ーー私と同じで運転が苦手なのね。

赤いミニバンに貼られた
「child in car 」のステッカーを横目に
ミニバンから離れた駐車場に停めに行った。


駐車するとほっと一息ついた。
「お母さん、何年運転してるのぉ!
これぐらいで疲れすぎ」
と笑う梓の姿を思い浮かべた。

ーー梓ならそういうわね。

1人暮らしをしてから
こんな風に家族を思い出すことが増えた。

「コンコン」
窓をノックする音の後に
助手席のドアが開く。

「お帰りなさい。」
冷たい空気と一緒に男が車に乗り込んだ。
佳乃子は助手席の男に
暖かく笑いかけた。