すずの皿にキャットフードを入れ、
リビングの棚にある小さな骨壷に手を合わせる。
すずの母猫かずは昨年老衰で亡くなった。
2匹は仲の良い親子だった。

かずとすずは佳乃子の父が連れてきた。
半ば無理矢理に押し付けてきた。
そんな表現がしっくりくる。
父の会社の倉庫にいたかず親子を
保健所に連れて行くよりはと
佳乃子のところに連れてきた。

1人と1匹が静かに朝食をとっていると
父から電話が鳴った。

「おはよう」
「佳乃子か、おはよう」
「どうしたの?」
「来月の母さんの10回忌、
いつものお寺でやるから。
母さんの好きな団子買ってきてくれるか」

父は母が亡くなってからは
気弱な面も見せるようになった。
持病の心臓病も持っている。
一人っ子の佳乃子は父の心配もあり
浩介の転勤についていかなかった。

「わかってるよ。松本屋のお団子ね。
それより朝の薬のんだ?
また忘れてない?」

父は「わかってる。わかってる。」と
佳乃子の声を遮って電話を早々に切った。

もうっと口をへの字に結んで佳乃子は顔を歪めた。