「私の夢はね」
柔らかく話し出す。


食事が終わった二人は
大咲山の展望台に行って景色を楽しんだ。
柊斗は景色の壮大さに心を奪われているようだった。


佳乃子は柊斗に誤解されぬように
丁寧に話をした。
「英語を使ったお仕事をすることなの」
「だからね」
五月の朝の風が強く吹いた。

柊斗は寂しそうな顔で話しを聞いている。
それに気づいて佳乃子は

「私達友達だからまた会えるわ」
「僕も英語を勉強したい。
僕に英語を教えて」
おもちゃを欲しがるように必死にお願いしている。
柊斗らしからぬ子供っぽさに押されて
佳乃子は簡単に承諾した。
「うん。いいよ。」
「会いに行く!」

佳乃子は小躍りする柊斗を見て微笑んでいる。
ガッツポーズした柊斗の声が
大咲山の静かな景色に溶けていった。



ーーー3年後
10月のオーストラリア、ブリスベン。
少しずつ暖かくなり半袖でハロウィンに
染まった街を見上げると
三年過ごしてもまだ南半球に慣れない佳乃子だった。



Kanoko has been in Australia for three years and works as a Japanese language teacher.