「楓や梓の存在を柊斗には
話してあったからね。
柊斗が産まれる前に
家族がいたことは
少し前に話していた。
自分のせいで私が前の家族と離れたと
思ったんだろう。」
浩介は瞼をギュッと瞑ると
手で顔を覆った。

浩介から少し離れたダイニングテーブルの
椅子に楓は座って聞いていた。

浩介の方に身体を向けると話し始めた。

「柊斗は親父のことを一番に
考えたんじゃないかな。
血も繋がって無いことがわかって
それが罪悪感に変わったのかもしれない。
母親がいない
父親も血が繋がってなくて。
柊斗はもしかしたら1人ぼっちに
なるかもしれないって
そんな怖いおもいを抱えているはずなのに…」


「柊斗は言ってた親父が
1人ぼっちにならないように
ここに来たって。
前の家族に謝って
許してもらいに来たんだよ。
俺もなんとなくわかるんだよ。
親父の子供だから。
今の親父は疲れ過ぎているよ。
親父がいつか倒れちゃうんじゃ無いかって
柊斗も心配してたんだよ。」

楓が話し終わるまでに
浩介はボロボロと涙を流していた。
幼いと思っていた柊斗が
自分のことを思ってここまで来たこと
佳乃子と離婚してから
親父と呼ばなくなった
楓に久しぶりに親父と呼ばれたこと
いろんな思いが涙として溢れた。

「いい息子が2人もいたんじゃ
親父もかかっこ悪いとこなんか
見せらんないな」
山城がエールを送るように
浩介の背中をバンバン叩く。