はじけて散っていくだけ



『もしもし?どうした』



いや、電話出るのかよ。
ママからあんなことを聞いたあとだから、てっきり音信不通みたいになるのかと思ってたのに。

部屋に駆け込んで真澄に電話を掛けてみたら、家についていたのかいつものように電話に出た。
なにがどうした、だよ。こっちは意味もわかんないくらいい頭ぐちゃぐちゃだってのに。

すぅ、と、ばれないように深呼吸をする。


「真澄、…どっか行っちゃうって、ほんと?」
『あー……、聞いたか?』
「うん、ママに。ねぇ、だから付き合おうって言わなかったんだ?」
『ん、そう』


私が黙ってしまえば、電話は沈黙に包まれた。
そのままいなくなってしまうんじゃないかと怖くなって、慌てて話題を探した。


「そんな遠いところなの?」
「おう、海外」
「えっ。海外!!?」


やばい、思った五十倍は遠いわ。
え、引っ越しじゃなく留学とかそっち!?


「い、いつ行くの」
「えっと、夏休み中にはだな」
「そ、そんなに早いの……?」
「だから言い逃げしちまおうと思ったのに」
「あ、あんたねぇ」


っはは、となんてことないように笑う真澄に少しイラっとする。
なに、言い逃げって。


「真澄、15分後に外出てて」
「………おっけ」


返事を聞いたらすぐに電話をきり、ヘルメットを引っ掴んで部屋を出た。


「ママ、もっかい出てくる!」
「夏月!?……あらあら」


ブロロロ、とバイクのエンジンをつけ、ヘルメットをしてまたがった。

あいつ、直接話さないと気が済まない。
言い逃げなんてさせてやるもんか。
付き合おうって言わなかったこと後悔させてやる。