モイラ --天使が犯した罪と罰--




「どうしてそんな、苦しそうな顔をするの」



クロイの指摘は図星だった。


私の笑顔は実際にはピエロのように、本心を隠した不気味なものであった。


クロイの言葉で張りつめた糸がほどけるように、少しずつ安心感を取り戻していく。



「俺の前では無理して笑わなくていいから。
健康で、楽な状態でいて」


「クロイさん……」


「“クロイ”でいいよ。
アリアも今が厳しい時期なのは知ってるから。
何かあったらすぐに俺に相談して」



“クロイ”と呼び捨てで呼ぶと、彼の瞳孔が一瞬大きくなって、嬉しげな顔を浮かべる。


彼を見ると私の気持ちも綻んで、春風のように心地よさが芽吹く。



「ありがとうございます…なんだか、嬉しい」



そんな私の心に一抹の期待が過る。


“ユマ・オーウェン”と“ヘメラ”のことをよく知っている彼ならば、私が天使であることを隠したまま、記憶を取り戻すのを手助けしてくれるのではないかって。


しかし多忙である彼を利用する訳にはいかず、その気持ちは心の奥底に閉じ込める。


今私は、どこか確信してしまった部分があるのだ。




──心の中で、私はきっと“ユマ・オーウェン”なのだと。