モイラ --天使が犯した罪と罰--




「……それって、“ヘメラ”の」



そう言いかけて、やめた。


しかしクロイは私の思惑に気づいていたようだった。


彼は少しだけ目を伏せて、誰かを想うかのように瞳が揺れる。



「“結合双生児の分離手術”」



クロイはぽつりとそう呟いた。


私はその言葉を聞いたときに、心が磁石のようにぐっと引き寄せられる。



「分離手術で、双生児のうち妹の方が亡くなったんだ。
それが結構大事になって、アリアの父と兄は裁判にまで追い込まれた」


「そんな……アリアもですか?」


「いや、アリアは執刀していない。
執刀したのはアリアの父と兄で、アリア自身は何も関与していないんだ」



──でもそのことがきっかけで、アリアは塞ぎ込んでしまった。


クロイの言葉の一つ一つが、頭の中をぐるぐると駆けめぐって、私は意識が遠のくような感覚に襲われる。


一体アリアは、私と出会うまで、どんな苦しみを家族と共有していたのだろうか。