モイラ --天使が犯した罪と罰--




「アリアのところはね、医療家系で全員がドクターなんだよ。
サンライズ家の一族はドクターの中でも心臓医療に特化していて、一目置かれているんだ」



後日クロイの元へと訪れた際に、アリアのことについて尋ねると、静かに語りはじめた。



「“心臓医療の神”なんて呼ばれたりもしてる。
俺も患者に何かあれば、サンライズ家の人に紹介してるし、転院搬送もしてる。
この辺りでは欠かせない存在、すごいよね」



──まぁ、俺はじきにサンライズ家を越えるドクターになるけどね。


そう言ってクロイはエコーの電源を入れ、いつも通りの診察が始まる。


じんわりとエコーゼリーが胸の上で温まると、クロイはそのままエコーを滑らせて私の心臓を診る。


相変わらず私の心臓は規則正しく拍動しており、白黒の画像でもそれは分かった。



「じゃあ、アリアの父親も医師なんですか?」


「そう、“アリエス・サンライズ”先生だったね。
まだ現役のドクターなのに、もう手術はしないって言っていたような」


「“もう手術はしない”?
一体どうして……」


「執刀した手術で患者が亡くなったからね。
リスクが大きい手術で死亡率も高かったんだけど、患者がかなり有名な人でニュースになったんだ」