モイラ --天使が犯した罪と罰--




私がごくりと生唾を飲み込んだ瞬間、ぶつりと音を立ててテレビの電源が落ちた。


後ろを振り向くと、見たこともない表情のアリアがそこに立っていたのだ。


アリアの手には、テレビのリモコンが握られている。


どこか恐ろしいような、そんな姿を見ると、思わず後退りしてしまう。



「……あー、またやってるのね。この番組」


「アリア…?」


「気に入らないのよね、こうやって失敗を吊し上げて本当に………」



ぼそぼそと呟くアリアの姿が、我を忘れてしまった人形のようで、私はぐっとアリアの腕を掴んだ。



「アリア…!しっかりしてください!」



はっとしたアリアの瞳から生気が宿ってきて、私は腕を掴んだ手の力を緩めた。


私の手には、アリアの腕の固さが、筋肉と骨の感触が残り続けている。



「あら、やだ。
アタシったらもう……取り乱してごめんなさいね」



きっとアリアは私に語ってくれたように、家族との確執がとても深くて、それでいて不安定な基盤を築いているのだろう。


私はそれをどうすることもできず、同じように悲しむことしか出来なかった。


それが優しいこの人の前では、堪らなく悔しかった。