「クロイはね、正直【アリシス】に似てると思うの。
要領の良いところとか、優秀な所とか、欲しいものを全て手に入れようとするところとか。
あまりにも、そっくりで……アタシ」
アリアの瞳が波のように揺らいでいって、私はそっと彼の背中を擦る。
アリアがこんなにも、自身の弱いところをさらけ出してくれたのは初めてかもしれない。
アリアは自分のことをあまり話そうとはしない。
反対にクロイは私を試しているかのように、何かを思い出させようとしているみたいだ。
アリアは優しすぎるんだろう。
「ユマ、アタシのこと“アリア”って呼んでくれる?」
「ア、リア……」
「これからは“アリア”って呼んで。さん付けじゃなくてもいいから」
「どうして」
「どこにも行って欲しくないから」
アリアのルビー色の瞳が切なく揺らいだ。
それに魅せられるように、私は彼の瞳に釘付けになる。
彼の独占欲が、心に絡み付いて、ぎゅうっと締め付けられる感覚がする。
「私は、どこにも行かないですよ」
私はそのままアリアの瞳から目を離せずにいて、お互いにゆっくりと顔が近づく。
それ以上のことはしなかった、いや、出来なかった。
私たちの関係を──壊したくはなかったから。
