アリアは頭を上げて、私の頬をそっと撫でる。
その手は余りにも冷たくて、私は上からそっと手のひらを重ねると、彼はハッとした表情をする。
「今年はユマが側にいてくれるから、去年よりずっと気持ちが落ち着いてるの」
「アリアさんには感謝してるんです。
だから少しでも良くなったらいいなって思っただけで、私は何も……」
「その気持ちだけで十分なのよ。
アタシのことを考えて、ちゃんと見ていてくれるから」
アリアは少しずつ話し出す。
私はそれを一言も聞き逃さず、彼が語る言葉により、目の端から涙がじんわり滲んでいった。
「アタシね、ずっと独りだったの。
元々医療家系で、生まれた時から医師になるための勉強をしてきて、周りのことなんて見る余裕…全然無かった」
心臓医療の神と呼ばれるサンライズ家に生まれ落ちたその瞬間から、人生は決まったようなものだった。
そう語るアリアも私と同じように、徐々に目の端が涙で滲んできて、見たこともないような表情を浮かべるのだ。
「アタシには【アリシス】っていう名前の兄がいて、ずっと兄と比べられて、あんまりいい思いはしてきて来なかったの。
色んなものを奪われて、悔しくて、がむしゃらにしがみつきながら生きてきたのに……」
──結局家族も、友達も、好きな人も、皆アタシじゃなくて兄である【アリシス】を見るの。
