少し離れた場所に腰掛けた筒井さんは、
いつもはベランダで必ず吸う煙草を
取り出すと、目の前で火をつけ
そこで吸い始めた。
以前フランスに旅立たれる前に、
こう思った事を今思い出した‥‥
私から筒井さんのそばを離れる日は
来ないけど、筒井さんから離れる日が
来ることはあると‥‥
私がもっと理解のある大人の女性なら、
あの続きを拒まず受け入れてあげれたのかもしれない‥‥
私が幼すぎて経験がないだけに、
筒井さんに色々我慢をさせてしまって
いたのかと思うと苦しくなる‥
ここに来ることだって本当は
嫌だったのかもしれないのに、
1人で浮かれてしまって恥ずかしい気持ちでいっぱいだ‥
泣いたらまたきっと溜め息を吐かれる。
筒井さんは今まで一度も私に
嘘なんて言わなかった人だからこそ、
伝えてくれた言葉は本当だと思えた。
「‥分かりました‥‥帰ります。
私なんかと‥向き合って頂いて
ありがとうございました‥‥。
私には‥ッ‥‥筒井さんと過ごした
時間はどれも‥‥‥全部
幸せしかありませんでした。
それなのに、筒井さんが一番苦しい
時に、苦しめてしまって本当に
ごめんなさい。
お体に気をつけて無理されないで
ください。早く良くなることを
願ってます‥‥」
泣くな‥‥‥
いつも何度もそう言われてきたから、
最後は迷惑をかけたくない。
筒井さんに貰ったキーケースから
鍵を取り外すとテーブルの上に鍵を
そっと置き、ゆっくりと立ち上がった
「また‥お仕事に復帰されましたら、
会社の後輩として接しますので、
安心されてください。
今まで‥‥‥本当に
ありがとうございました‥」
『‥‥‥‥』
感謝の気持ちを込めてお辞儀をすると、
リビングに置きっぱなしのスーツケースを手に取り玄関に向かった。
もうここに来ることも二度とない‥‥
ここは思い出が多過ぎるから、
これ以上ここにいたら耐えられない
玄関からもう一度深く頭を下げると
ドアを開けて静かに閉め、
急いでエレベーターホールに向かった。
まだ泣くな‥‥‥
こんなところで泣いて誰かに
見られたりでもしたら恥ずかしいから
家までは我慢しないと‥‥
到着したエレベーターに乗ると、
エントランスに着いた時にちょうど
住人を送ってきたであろうタクシーを
見つけてそのまま捕まえた。
『あれ‥‥井崎さん?』
ドクン
いつもはベランダで必ず吸う煙草を
取り出すと、目の前で火をつけ
そこで吸い始めた。
以前フランスに旅立たれる前に、
こう思った事を今思い出した‥‥
私から筒井さんのそばを離れる日は
来ないけど、筒井さんから離れる日が
来ることはあると‥‥
私がもっと理解のある大人の女性なら、
あの続きを拒まず受け入れてあげれたのかもしれない‥‥
私が幼すぎて経験がないだけに、
筒井さんに色々我慢をさせてしまって
いたのかと思うと苦しくなる‥
ここに来ることだって本当は
嫌だったのかもしれないのに、
1人で浮かれてしまって恥ずかしい気持ちでいっぱいだ‥
泣いたらまたきっと溜め息を吐かれる。
筒井さんは今まで一度も私に
嘘なんて言わなかった人だからこそ、
伝えてくれた言葉は本当だと思えた。
「‥分かりました‥‥帰ります。
私なんかと‥向き合って頂いて
ありがとうございました‥‥。
私には‥ッ‥‥筒井さんと過ごした
時間はどれも‥‥‥全部
幸せしかありませんでした。
それなのに、筒井さんが一番苦しい
時に、苦しめてしまって本当に
ごめんなさい。
お体に気をつけて無理されないで
ください。早く良くなることを
願ってます‥‥」
泣くな‥‥‥
いつも何度もそう言われてきたから、
最後は迷惑をかけたくない。
筒井さんに貰ったキーケースから
鍵を取り外すとテーブルの上に鍵を
そっと置き、ゆっくりと立ち上がった
「また‥お仕事に復帰されましたら、
会社の後輩として接しますので、
安心されてください。
今まで‥‥‥本当に
ありがとうございました‥」
『‥‥‥‥』
感謝の気持ちを込めてお辞儀をすると、
リビングに置きっぱなしのスーツケースを手に取り玄関に向かった。
もうここに来ることも二度とない‥‥
ここは思い出が多過ぎるから、
これ以上ここにいたら耐えられない
玄関からもう一度深く頭を下げると
ドアを開けて静かに閉め、
急いでエレベーターホールに向かった。
まだ泣くな‥‥‥
こんなところで泣いて誰かに
見られたりでもしたら恥ずかしいから
家までは我慢しないと‥‥
到着したエレベーターに乗ると、
エントランスに着いた時にちょうど
住人を送ってきたであろうタクシーを
見つけてそのまま捕まえた。
『あれ‥‥井崎さん?』
ドクン



