幼馴染[短編]

 唇が離れたとき、
 彼が耳元で囁く。

「ドキドキした」

 彼の顔を見るのが
 恥ずかしくて
 なんとなく目をそらす。

「じゃあ、どうしてあのとき
 あんなことを言ったのよ」

「夕が漫画ばかり見ていて嫌だったから。
 それになんか恥ずかしいし。
 夕は夕で表情一つ変えないし」

「そんなことないよ。
 苦しくなるくらい
 ドキドキしたんだから」


「そんなことないって。
 どうってことないって
 顔していただろう」

 さっき感じた疑問。

 もしかするとあたしも宮田も
 同じだったのかもしれないと思った。