恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで

い、いつの間に後ろに！？
集中して読んでたからか、全く気が付かなかった‥‥


「あっ‥‥‥」


背後から伸びてきたキレイな手が
私の手から原稿をあっさりと奪って
しまうと溜息をこぼした。


『高城、和木。書けたからとっとと
　チェックして帰れ。』


『ほんとですか！？
　ありがとうございます！！』


瀬木さんは、高城さんに原稿を渡すと
私の隣に腰を深くおろした。


何か‥瀬木さん‥怒ってる？


部外者が原稿を読んだりなんかして
まずかったかな‥‥。


疲れた様子の瀬木さんはソファに深く腰掛けると眼鏡を取り瞳を閉じてしまった


昨日も夜中にトイレに起きた時に
仕事部屋から漏れる光が見えたから
絶対寝ないで書いてたんだと思う


隣の瀬木さんを起こさないようにと、
真剣に原稿に目を通して仕事をし始めた二人の邪魔にならないように
そっと席から立ち上がろうとした。



『ここに座ってて。』


ﾄﾞｸﾝ


その言葉と同時に驚くと同時に掴まれた私の右手首に熱が集中していく


「……せ…瀬木さん？」

『…………』


瞳を閉じたまま掴んでるけど、もしかしなくても寝てる？


そっと耳を顔の近くに寄せれば
微かに聞こえる寝息が届いた


どうしよう……。
捉えられた囚人のように立ち尽くす私に
今度は微かな笑いが届く


『‥そこにいてあげてよ。』


和木さん……


そんなに強くない握りかただけど
キレイな長い指が離さないように絡み、
仕方なくまたそこに座った。


先輩が毎日図書館で本を読んでいたから
本が好きなのは勿論知ってる。


でもいつから読む方じゃなくて書く方に変わったんだろう？


今は想像出来ないくらい近くにいるのに、あの頃と同じで何も聞けずに見てるだけの私はちっとも成長できていない。


こんな気持ちでそばにいていいのかな‥