檻の中の恋と、奪いに来た君  〜閉じ込める愛か、奪い出す愛か

「見つけた」

背後から聞こえたその声に、全身の血が一瞬で凍りついた。

ー嘘。

振り返らなくても分かる。

あの声を、間違えるはずがない。

「…っ」

逃げなきゃ。

気づいた時には、もう走り出していた。

人混みをかき分けるように前へ進む。
肩がぶつかっても、視線を向けられても、何も気にする余裕なんてない。

ただ、逃げる。

心臓がうるさいくらい鳴っている。

ーなんで。

ーどうしてここにいるの。

2年前、あの場所から逃げ出したはずなのに。

もう二度と会わないと思っていたのに。

頭の奥に、あの頃の記憶がよぎる。

優しく笑ってくれた顔。
名前を呼ぶ、あの低い声。

「愛葉」

大事そうに触れてくれた手。

ー大好きだった。

だけど。

鍵のかかった部屋。
鳴り止まない通知音。
どこにいるのか、誰といるのか、何をしているのか。

全部、見られていた。

「外に出るな」
「俺以外は見るな」
「お前は、俺だけ見てればいい」

優しかったはずの声が、少しずつ歪んでいく。

怖くて、苦しくて、それでもー

嫌いになれなかった。

「はぁ…っ、は…」

息が続かない。

視界がぼやけていく。

それでも足を止めるわけにはいかない。

捕まったら、終わる。

「逃げんなよ、愛葉」

すぐ後ろで、低い声が落ちた。

距離が、近い。

もう、すぐそこにいる。

「…っ!」

咄嗟に細い路地へと飛び込む。