「部活の帰りか?」
「……はい」
「なんの部活や? 野球か?」
「……バスケ部ッス」
「バスケか。洒落たもんやっとるな」
「しゃれた……、いや、まあ、はい」
なんでこんなことしてるだろう、俺。
さっきから喋りかけ続けてくる倉橋のじいさんは、俺の気まずさになど全く感知しない様子だ。あの頃の豪胆さは全く色褪せていない。
家までの道のりはまだ遠く、あと数十分はこの気まずさを耐えなければならないと思うと気が重い。
俺は気を紛らわすために、もらったラムネ水を煽る。
「至、お前まだ侑子のこと好きなんか?」
「ブハッ!!!!」
いきなりなにを言い出すかこの老人は!!
俺は口元を拭いながら、慌てて隣の老人を見る。
「なっ、なにを……!」
「アッハッハッ、青い、青いな〜〜」
倉橋と言い、倉橋のじいさんといい、倉橋家の血筋は突拍子もないことをいきなり言い出す悪癖でもあるのか!
「あいつは手強いで〜。ハッキリ言わんとなんも伝わらんから覚悟しとき」
……そんなこと、もう身に染みて分かってますよ。わざわざ言われなくたって。
なんて、返せるわけもなく、俺はただ押し黙る。
すると、倉橋のじいさんが怪訝な顔をした。
「なんや、お前らまだ喧嘩しとんのか?」
「喧嘩……、俺が一方的に嫌われてるだけです」
……ていうか、なんで俺は好きだった女の子のじいさんにこんなこと言ってんだろう。
「あいつに直接そう言われたんか?」
「それは……、言われては、ないですけど」
「あいつは嫌いやったら嫌いって言うで。そう言う正直な所は、礼子さんによおに似てんねん。あんな仲よお遊んどったんや、それくらい至も分かっとるやろ?」
「……」
握りしめたラムネ水の結露した水滴が、手のひらに伝ってくる。
それを直接聞く勇気がないから、こんなことになってるんですけどね。
再び流れた沈黙を、倉橋のじいさんが破る。
「至、一個頼みがあんねん」
「……なんすか」
「来年、侑子がもし……月夜見祭で神楽やることになったら、侑子のこと面倒みたってくれ」
「……」
「お前も知っとるやろ、周りには他所もんには厳しい輩もおる。せやから、お前が守ってくれ」
ぽん、と俺の肩に手を置く。
豪快さとは真逆の優しい力で。
「頼んだで」
「……、は」
い、と頷きかけた時だった。



