事件が起きたのは、次の週の水曜日。
待ちに待った将棋クラブがある日だ。
朝、教室のドアを開けた瞬間、一斉に集まった視線で違和感に気づいた。なんというか、好奇心に満ちた嫌な視線だ。
不審に思いながらも、俺は自分の席について、ランドセルを下ろした。
「いーたるッ!!」
後ろから強引に肩を組んできたのは、クラスでもお調子者の男子だった。にやにやと癪に触る笑みを浮かべている。
「急になんだよ」
「至ぅ、中々やるやん」
「はあ? 何がだよ」
「惚けちゃって〜」
ふざけた口調で肘で脇腹を突かれて、苛立ちが増す。
「だから、なんだよ」
「お前、倉橋さんと付き合ってんだろ〜!? この前お前と倉橋さんが一緒に帰ってるとこ見たやつが居るんだよ!」
「……なっ、」
かあっと、自分の頬が熱くなるのを感じた。
しまった。こんな露骨に反応したら、誤解される──もうすでに時遅し。
俺の反応を見たクラスメイトがわっと周りを囲んだ。
「えっまじなん!?」
「至やらしぃ〜〜!!」
「いつから付き合ってんの!?」
「どっちから告白したんだよ〜!?」
揶揄う声は次第に大きくなって、沸々と腹から湧き上がる怒りと恥ずかしさで俺は感情が爆発してしまった。
「……全然好きじゃねえーし!! あんな──つまんねえ女!!!」
声を枯らすくらいの大声で叫んだ。
教室に俺の声が響いた。
水を打ったように静まり返った中で、唐突にバサバサと何かが落ちる音がして振り返る。



