隣の席の坂本くんが今日も私を笑わせてくる。


 ぱちん、と将棋盤に置いた駒が鳴る。

 対面に座る彼女は、眉を寄せて険しい顔で将棋盤に乗る駒を凝視する。それから、うんうん唸って、ようやく頭を下げた。

 「…………参りました」
 「ふふん。はい、俺の勝ち〜! いぇ〜い。これで、54勝だな」
 「……54勝55敗でしょ。まだ私の方が勝ってるし」
 「残り1勝なんて楽勝だね。ユウは最近の俺の成長を甘く見過ぎてる。俺は大器晩成型なの」
 「ふん。一回くらいで生意気な口を叩くじゃない」
 「んじや、もう一局する?」
 「する」

 駒を並べ始めていると、近くのドアが開いて、公民館の管理人のおじさんにおーい、と声をかけられた。

 「もう日暮れだぞ〜、危ないから帰りなさい」
 「ええ〜!? まだ勝負ついてないのに! ちょっとくらい見逃してよケチ!」
 「わがまま言わない。片付けるよ」
 「……ユウだって、さっきまでやる気満々だったくせに」
 「何か言った?」
 「……べっつに〜」

 せっつかれるように後片付けをして、公民館を追い出された。

 夏休みが終わってから、日が落ちるのがずいぶん早くなってしまった。外を出る頃には、空に浮かぶ太陽の赤があと僅かで見えなくなりそうだった。

 「あーあ。結局今日もユウの勝ち越しかよ」
 「相変わらず負けず嫌いだね」
 「はぁ〜? それはお前もだろ。この前だって、俺が……痛ッ! 足踏むのはなしだろ!」
 「足がもつれちゃった。ごめん」
 「お前な……」