隣の席の坂本くんが今日も私を笑わせてくる。


 倉橋は、すこぶる物覚えが良かった。

 将棋のルールを教えて、すぐに俺とも対等に勝負できるくらい。

 お互いに負けず嫌いだったから、手抜きは一切なしのガチンコ勝負。

 無表情で感情の変化がなく、大人びて見えた彼女は、その実、結構笑いのツボが浅いし、負けそうになるとムキになるし、勝ったら得意げな顔で威張るし、結構子供っぽいところもある。

 ひとりでいるのが好きな彼女には友人と呼べる友人がいなくて、その全部が、同い年の中で俺くらいしか見れないのかと思うと、正直、優越感もあったと、思う。

 幼稚園は別々だったけど、小学校で同じクラスになった。

 クラスの中では活発な方だった俺と、大人しかった彼女とは、全然違うグループにいたから、学校で話すことはなかった。なんとなく出来た、暗黙の了解だった。

 だから、週に一回。
 水曜日にある将棋クラブが楽しみで仕方がなかった。

 でも、将棋が特別好きっていう訳でもなくて。
 っていうか、たぶん、将棋じゃなくてもなんでも良かった。

 彼女と一緒なら、囲碁でもチェスでもオセロでも、なんでも良かったんだ。