そして、翌日です。
「……坂本」
「はい」
「それはなんだ」
「まくらです」
「……そうか」
「はい」
「一ついいか」
「何ですか」
「何で持ってきた」
「昼寝のためです」
「……そうか。坂本はー……あれか、夜更かしでもしたのか」
「今朝は9時間寝ました」
「……そうか。うん。その調子でスクスク育てよ」
先生はそれ以上の詮索を諦め、点呼をとり始めました。次々生徒の名前が呼ばれる中、私は視線を感じて斜め前を見やります。
早川さんが組んだ腕の隙間からピースをして、したり顔でこちらを見ているではありませんか。
私は息をついて、窓の外を見上げます。
やはり、この教室で正気なのは私だけのようです。



