「俺と倉橋が婚約してるって言ったら焦ってたよ、坂本くん」
「ゴホッ、ゴホッ!」
「大丈夫?」
背中をさすろうと伸ばされた手を振り払い、私は彼を睨みつけました。
「はあっ、はあっ……ちょっと、いきなり何言ってんの?」
「だって一応事実だし」
「それはっ、おじいちゃん同士の口約束でしょう! 私は認めてない!」
「冷た~い。中学んとき付き合ってた仲なのに」
「それは噂に尾ひれがついてそうなっただけ!」
「……フッ」
「……何笑ってんの?」
「あはは、悪い悪い。そんな顔真っ赤にして否定されるとは思ってなくてさ。安心して、坂本くんには嘘だってちゃんと言ってあるから」
「……」
……処す?
不敬罪で処す?
こいつの余裕な面に一発入れても、無罪放免を勝ち取れるのでは?
渾身の一撃を食らわせようか本気で悩んでいると、ケラケラ笑っていた白波瀬くんが何か言いたげにじいっと見つめてきます。
「……何」
「付き合ってんの? お前ら」
「…………死ね」
「ひっど」
「……どいつもこいつもどうしてそんな他人の色恋が気になるの?」
「他人の恋愛って気楽だし~、……っだ! 今蹴ったろ!」
「……」
蹴り上げた脛を抱えて、痛がる彼の丸まった背中を見てふん、と鼻をならします。
いい気味です。



