午前中の補講授業が終わり、再び白波瀬家へ神楽の稽古をしにやってきました。
月夜見祭まで残り、4日となり、いよいよ準備も大詰めを迎えています。
白波瀬邸には自治会の関係者や、祭りの設営関係の方々などがひっきりなしに出入りしており、常に人の声で溢れています。
落ち着かない環境の中で、2時間ほど稽古して、ちょうど午後3時。
白波瀬くんのお母さんから、お茶請けとお茶の差し入れを頂き、一時休憩。お饅頭に舌鼓を打っていると、ふと、後ろから気配を感じて振り返ります。
「今日、坂本くんと喋った」
学校に帰ってきた小学生が一日の出来事をお母さんに話すくらいのテンションで、白波瀬くんはしれっとそう言いました。
「……」
「はは、嫌そうな顔」
息を吐くように笑いながら、白波瀬くんは私の隣に腰を下ろします。
「お隣失礼」
「……(失礼するな)」
真夏の日差しを降り注ぐ縁側で、茶菓子の乗ったお盆を挟んで横に並びます。
さりげなく隣の様子を伺うと、白波瀬くんはあちーと手で仰いでいます。
人に意味深な発言をしておいて、何も言わないつもりのようです。
こちらから質問をすれば、彼は水を得た魚のように嬉々として私をからかってくるでしょうから、下手に口を挟めません。
長く見つめすぎていたせいでしょうか、不意に白波瀬くんがこちらを振り返り、目が合いました。私の感情を見透かすように、にやりと口元に笑みを浮かべました。
「いいの?」
「何が」
「坂本くんと何話したの、って聞かなくて」
「……」
相変わらず、食えない奴です。
何を考えているのか、まったく読めません。
「別に」
「なんだ。つまんな~い」
白波瀬くんが頬杖をついて、大げさに肩を落とします。
ふん。反応するだけ無駄です。
私は心を落ち着かせるつもりで、お茶を一口。



