隣の席の坂本くんが今日も私を笑わせてくる。


 「こっ……」

 婚約者……こっ、婚約者!!!!?????
 婚約者って何??????
 今すぐ辞書で引いて確認したいんやけども??? 
 結婚を約束した仲ってこと???????? 
 えっ、ちょお待って待って。元カレとかそういう次元軽く飛び越えてない???? 
 マジで言ってる?????? 

 「……フッ、ふふ」

 薄ら笑う声と共に、思考が浮上する。
 小刻みに肩を振るわせて口元を抑える白波瀬くん。は?
 目尻の涙を拭って、一言。


 「ごめん、冗談だよ」
 「は?」

 面のいい男がしてやったりと言いたげに口角を上げていた。

 えっ……。
 処す?
 不謹慎罪で極刑に処す?
 今なら無罪放免になるんちゃうか?

 青筋を立てて怒る俺をまるで子猫を宥めるような口調で白波瀬くんは続けた。

 「噂聞いたんだろ? 俺と倉橋が付き合ってたとか、そういうの」
 「……(図星)」
 「それデマだから。中学んときにそういう噂立ったけど、婚約者ってのも、俺のじいさんと向こうのじいさんとの口約束みたいなもんだし」
 「……」
 「だから、心配しなくていい」

 白波瀬くんは今日の天気を教えてくれるくらいの気安さで、言った。

 「俺、アイツに死ぬほど嫌われてるから」