大正時代に名を馳せた文豪、芥川龍之介曰く、”運命とは偶然よりも必然である”らしい。
運命とは恐ろしいもので、つい最近まで顔も名前も知らなかった人物が夢の中で出てきたこと自体が偶然などではなく──、はたまた課題を出し忘れて呼び出しを食らい、職員室の廊下で鉢合わせた時点で、最早仕組まれた必然なのかもしれない。
「転校生の坂本くん?」
先に声を掛けてきたのは、白波瀬至──倉橋さんの元カレ(真偽不明)だった。
俺よりも数センチ高めの瞳が親しげに細められた。
余裕に満ちた表情が妙に鼻につく。
……いや、落ち着け。
それは先入観というかバイアスかかっとるだけや。単純に話しかけてくれただけかもしれんし。
「……せやで」
「あー確か、倉橋と同じクラスだったっけ?」
「……セヤデー」
あかん。ピキるな。
落ち着け、落ち着け俺……!
口頭一番に倉橋さんのことを倉橋って若干距離近い感じで呼ぶんのなんなんとか、そんなこと思ったら負けや。心頭滅却、心頭滅却。
水面下でドス黒い感情がぐつぐつに煮え滾っていることなど梅雨知らず、白波瀬くんは会話を続ける。
「出身は大阪?」
「まあ、そんなとこ」
「何市?」
「……西宮ってとこ」
「西宮って兵庫じゃなかったっけ?」
思わず顔を上げてしまった。



