隣の席の坂本くんが今日も私を笑わせてくる。


 「なあ、早くしてくんない? 腕千切れる」

 とある書店の軒下、私は両替した小銭を手のひらに乗せて、ガチャガチャコーナーの前にしゃがみ込んでいました。

 こねこねこぱんシリーズの中で、お目当てのパンをこねる猫のキーホルダーが全く出ず、加えて横から野次を飛ばしてくる邪魔者のおかげで、さらに怒り倍増です。

 私は取手を力任せに回しながら、ため息をつきます。

 「……荷物置いて帰れば?」
 「そんなことしたら俺がじいちゃんに怒られるわ」
 「じゃあ、ちょっと黙っててくれない?」

 がこん、と音を立てて、カプセルが落ちてきます。
 拾い上げて、カプセルの蓋を開けようとしますが、中々固くて開きません。

 悪戦苦闘していると、横から伸びてきた手がカプセルを奪いました。
 
 視線を辿って見上げると、軽々とカプセルを開けた白波瀬くんが中身を取り出していました。

 「……ちょっと」
 「何これ? イースト菌マン? お前、こんなん欲しかったの? ……趣味悪」
 「違う」

 ドライイーストの箱パッケージを被ったヒーローのキーホルダーを眺める白波瀬くんを横目に、私は再びガチャガチャに小銭を投入しました。

 もう一度取手を回して、出てきたカプセルを確認します。

 「……」
 「ハハ、見事にダブってやんの」
 「……」

 馬鹿にしたような笑い声を上げる無礼者を睨みつけ、私は立ち上がりました。