隣の席の坂本くんが今日も私を笑わせてくる。


 「死んでも行きません」

 鬼気迫る形相だった。
 今まで見たことないくらい険しい表情を浮かべた倉橋さんがそこには、いた。

 決死のデートの誘いをほぼノータイムで断られた。

 制服の裾を掴んでいた指先の力がふっと抜けると、倉橋さんは俺の方を一切振り返ることなく行ってしまった。

 死んでも行かないって言われた……。
 えっ……今、死んでも行かないって言われた……?

 死んでも……?
 エッ……死んでも……?

 ☺︎
 「……もと、さか……坂本ォ〜!!!」
 「ハッ! な、なに?」

 耳音の爆発音で意識が強制的に戻される。
 こちらを振り返った早川が、不審なものを見るような顔で俺を見ている。

 「坂本どうした。もうホームルーム終わったよ?」
 「あ、ああ……うん」
 「これから夏休みだってのに、なんでそんな辛気臭い顔してんの?」
 「……うん」
 「……いちたすいちは?」
 「……うん」
 「だめだこりゃ」
 「どうしたの?」
 「あ、丹生に糸井くん。聞いてよー。坂本がおかしくなった」
 「それは今に始まったことじゃないと思うけど」
 「いーや。今朝からずっと様子がおかしい」
 「……あっ、そういえば今朝、倉橋さんと坂本くんが廊下で立ち話してるの見かけ……ちょ、坂本くん!?」
 「うぐっ、」

 俺は思わず胸を押さえつけて、机に突っ伏した。