隣の席の坂本くんが今日も私を笑わせてくる。


 『月夜見祭(つくよみさい)』と銘打たれたポスターを前に私は立ち止まりました。

 今朝、久々に昔の夢を見ました。

 祭りの日取りが近づいているからでしょうか。
 もしかすると、柄にもなく、緊張しているのかもしれません。

 7月も残すところ僅かとなり、本日が終業式です。
 午前中に学校が終われば、高校に入って初めての夏休みがやってきます。

 「おはよう、倉橋さん」

 聞き慣れた声がして後ろを振り返ると、人懐っこい笑みを浮かべた坂本くんが立っていました。

 「……おはようございます」

 見られたくないところを見られてしまいました。

 私は軽く会釈をしてさっさとその場を立ち去ろうとしましたが、坂本くんが掲示板に貼られたポスターをじいっと眺めました。

 「月夜見祭? この辺でお祭りあるんやね」
 「……そうみたいですね」
 「倉橋さんも行ったことあるん?」
 「地元なので」

 一刻も早くこの話題を切り上げたいのですが、どうやら坂本くんはかなり興味を惹かれている様子です。

 嫌な予感を察知した私は、では、と話を切りあげて教室へ歩き出したその時、

 「待って!」

 制服の裾を掴まれて、思わず立ち止まります。

 「……なんですか」

 首だけ振り返ると、坂本くんと目が合います。坂本くんの頬が一瞬にして赤く染め上がります。瞳の奥がぐらぐら揺れて、恥ずかしげに逸らされます。

 「……あんな、倉橋さん」
 「はい」

 深い呼吸をひとつして、坂本くんが顔を上げます。

 「お祭り、一緒にいかん? ふたりで」