祭囃子の音がする。
鈴の音が鳴り響くたび、白衣の裾が翻る。
指先の一片までもがしなやかに舞うその姿は、月光の朧げな光と灯火の中でより神秘性を増していた。
道ゆく人々が足を止め、神に捧げるその舞を息を呑んで見守る。
「綺麗やなぁ」
肩車をしてくれていた祖父が、感嘆の声を漏らした。
「知っとるか、侑子。おばあちゃんもあの舞踊っとったんよ」
「ふうん」
「初めて見た時は、花の精でも舞い降りたんかと思って釘付けやったなぁ」
「……おおげさじゃない?」
「アッハッハ! 侑子も大人になったらあの神楽をやってくれるか?」
「ええ。ヤダ」
「そおか」
祖父の笑いを含んだ寂しげな返答を聞いて、私はこほん、と咳払いをして続けた。
「……時給1500円なら考える」
「アッハッハッ! 侑子はしっかりしとるな。ほおか、1500円か。源次に言うとくわ。10年後が楽しみや」
「10年後なんてすぐだよ」
「そおやな。すぐやな」
祖父の竹を割ったような軽快な笑い声は蒸した夏の風にさらわれていった。



