顔が熱くて燃えそうだ。
心臓がこれ以上にないくらい早鐘を打っている。
足の力が抜けて、俺はそのままずるずるとしゃがみ込んだ。両手を覆った指と指の隙間から、彼女のローファーが見えた。
「坂本くん?」
「……」
「……怒りましたか?」
俺を宥めるために伸ばされただろうその指先を、掬い取るみたいに掴んだ。
俺の体温よりもずっと低い指先へ、徐々に熱が伝染していく。
みっともなくても、かっこ付かんくても、もう、なんでもいいや。
倉橋さんが、笑ってくれるなら。
その権利を、俺だけにくれるなら。
「……笑うんは、……俺の前、だけにして」
倉橋さんの方を見上げると、少し考えた後、うっすら笑みを浮かべた。
「善処します」
その口調に迷いがないから、もう、肩を落とすしかない。
「……そこは、嘘でもうんって、言ってよ」
「私も人間なので。絶対はないですから」
「はは……、倉橋さんらしいわ」
「もし、坂本くん以外に笑いかけて私が困ってたら、」
身をかがめた倉橋さんが、俺の耳元で囁いた。
「さっきみたいに、助けてください。私の番犬さん」
言葉を失う俺をよそに、倉橋さんは小鳥が囀るみたいな笑い声をあげた。絡まった指がするりと離れていく。名残惜しさを、ほんのり含ませながら。



