それから、彼の奇々怪界な行動は止まることを知りませんでした。
翌日、彼はゴーグルを装着して着席していました。
ええ、そうです。
プールの際に使う、アレです。
ちなみに現在、6月初旬です。
気が早いにも程があります。
しかも我が校には水泳の授業はありません。
全く解せないのは、クラスメイトが彼の奇行に無反応なことです。ゴーグルを付けた彼の横顔をみて、視線を黒板に戻します。
ひょっとして、この教室で正気なのは私だけ……?
ひとりでに頭を抱えますが、この頭痛のタネが次第に大きくなることを誰が予想したでしょうか──
翌日、『よく分かるゲートボール』というタイトルの冊子を坂本くんは真剣な眼差しで読み耽っていました。
再三いいますが、我が校にゲートボール部はありません。



