「──えーネットではよく人間に撫でられるのが大好きで、ナデナデが足りなくてうつ病になっちゃう子もいると言われてますが、それはあくまで動物園で赤ちゃんの頃から育てられた子に限るんですね〜。野生のウォンバットは単独行動で夜行性なので基本的には人間も他の動物との接触も嫌います。ちなみに弊園で育てられたウォンバット、フクくんは人間が大好きで〜、ここ最近の梅雨の影響で会いにきてくれる方がめっきり減ってかなり落ち込んでおります〜。どうぞ皆さんフクくんと名前を呼んであげてくださいね〜」
「フクくーーん」
「こっち向いて〜〜フクくーん」
「……(似てる)」
茶色のずんぐりむっくりとした体躯。
何かを切に訴えかけるつぶらな瞳。
そして、なにより……がくりと項垂れ気落ちする哀愁の漂う背中。
名前を呼ばれてもピクリとも動かないウォンバットのフクくんと、私よりも数メートル先で力無くパンダを眺める彼の姿が、リンクして見えます。数日前にパンダに大はしゃぎしていた面影は全くありません。
本日、校外学習です。
学校から電車で乗り継いで一時間ほどの動植物園へやってきました。平日だからでしょうか、私たちと同じ制服を着た学生と、子連れ客くらいしかお客さんはいないようです。
私はクラスの一番最後尾で動物を見て回ることにしました。視界の隅にやたらと彼の丸まった背中が見えるような気がしますが、無視です。



