思わず頭を抱えてしゃがみ込む。
俺もその辺の野郎と一緒やん!!!!
な〜〜んも変わらん!!!
まして俺は倉橋さんの彼氏でもなんでもないただのクラスメイトで、ただの隣の席の人やし。
小野寺にキレる権利とか全くない。
倉橋さんがどこで誰と会話して、かつて俺に笑ってくれたように、笑いかけたとしても……。
悶々と胸を締め付けるような痛みと、八つ当たりにも似た怒りの感情が混ざり合って、さらに気が落ち込んでいく。
「てか、大丈夫かな」
「……」
いつのまにか俺の隣にしゃがんだ糸井が、未だ談笑を続ける2人の姿を眺めながら言った。
「小野寺、あんまいい噂聞かないんだよね〜」
「……は?」
「バスケ部の女マネが先月でもう2人も辞めたの、小野寺が原因らしいよ。先輩と同級生を二股かけてそれがバレて大揉めしたとか、なんとか」
「ハァ!!!???」
「声でか」
糸井は、ふ、と息を吐いた。
「倉橋さんも小野寺の毒牙にかかっちゃうかもね」
「……」
「いいの? それでも」
「……」
☺︎
「なーにしてん?」
「ヒャッ」
水撒きでキンキンに冷えた指先を、馴れ馴れしく倉橋さんに顔を近づける小野寺の首筋に当てた。
さっきまでへらへら笑ってたやつが水かけられた野良犬みたいに悲鳴をあげて仰反るのは、少しスカッとする。
気になる女の子の前で情けない悲鳴を聞かれたのが相当に悔しかったのか、口元をひくつかせて俺の方を振り返る小野寺。
「なんだよ、坂本……」
「それ持つん大変そうやなーと思って」
倉橋さんが両手に持つゴミ袋を指差すと、小野寺ははは、と乾いた笑い声をあげた。
「それは俺がこれから手伝うから大丈夫だよ」
「まあまあ、そんな遠慮せんで。2人より3人のがええやん」
「ゴミ袋二つしかないのに?」
「一緒に持とうや。半分こしよ」
「……坂本と?」
「俺と」
「……手足りてるから大丈夫だよ、ありがとう」
「まあまあ、そう言わんと」
両者互いに譲り合わず、一つのゴミ袋の両端を引っ張り合う。
小競り合いを間で見ていた倉橋さんが、もう片方のゴミ袋を目の前に差し出してくる。
「そんなにゴミ袋を持ちたいなら、私のもお渡しします」
差し出されるがまま、ゴミ袋を受け取った小野寺。
「えっ」
「じゃあ、後はよろしくお願いします」
「え、ちょ……倉橋さ、」
倉橋さんは軽く会釈をして、颯爽とその場を後にした。名残惜しく彼女の背中に手を伸ばす哀れな子羊の肩をぽん、と叩く。
「2人で仲良く捨てに行こうや」
「……チッ」
小野寺は結構デカ目の舌打ちをして、俺の手からもう一個のゴミ袋を奪い取ると荒い足取りでゴミ捨て場の方へ向かった。
おー怖ぁ。ざまあみろ!



