「……ごめんなぁ、毎回」
しょんもりする坂本くんの赤くなった額に、絆創膏をあてがいます。
「今に始まったことじゃないので」
最後に仕返しのつもりで、ぐっと力を込めて絆創膏を貼り付けてやりました。坂本くんはあいたっと顔を顰めました。いい気味です。
例によって、保健室にやってきた私たちですが、やはり保健の先生は不在で、前回と同様にパイプ椅子に座り、向かい合って怪我の治療をすることになりました。
救急箱の中身を戻している傍らで、肩を落とした坂本くんがため息を吐きます。
「……はぁ、途中まで完璧やったのに……」
「……、そうでもないです」
ぽつりとこぼした小言を、坂本くんはうっかり耳に入れしまったようで、ぎょっと体勢をのけぞらせました。
「えっ、なんでぇ!? 気づいてたん!?」
「……」
私の無言を肯定と捉えたらしい坂本くんは、空気の抜けたバルーン人形のようにへにゃへにゃに脱力してしまいました。
おまけに引いた赤みが再び彼の頬に戻ってきます。
「気づいてたんなら言ってやぁ……!」
「……すいません」
「……もう、今日の俺の努力なんやったん……円周率頑張って数えたのにぃ……」
結構原始的な方法で平静を保とうとしていたらしいです。



