「坂本くん」
「ん〜?」
「…………私、可愛いですか?」
パキッと何かが小気味よく割れるような音がしました。
しかし、当の坂本くんの反応はイーゼルに隠れて何も分かりません。
少し間を置いて、顔を傾けた坂本くんがへらりと薄く笑いました。
「……うん。かわええよ」
「……(ふん)」
味気ない笑み一つだけ残して、再びイーゼルの奥に消える坂本くん。
期待したような反応が得られませんでした。
ふん、つまらない男です。
一番可愛いって言ったのはどの口ですか。
土日挟めば私の笑顔には慣れましたか。
そうですか、そうですか。別に構いませんが。
心の中だけで悪態をついて、不貞腐れた私は頬杖をついて、窓の外を向きます。私のトゲトゲしい心とは打って変わって、見上げた空は夏を感じさせる、目に染みるほどの青で一面澄み渡っています。
じいっと見ているうち、私は気づきました。
窓の向こう側──ではなく、窓に反射した姿。
イーゼルで隠れる彼が、どんな反応をしていたのか。
首まで真っ赤に染め、口を手で覆って何かを堪えるみたいに肩を振るわせているところが、ばっちりと映っています。
……ふん。ばかなひと。
その時一緒に映っていた私の姿については言及しないこととします。



