「……ということで爆誕した、こちら倉橋さんスマイルバージョンで~す」
ぱちぱち、乾いた拍手を早川さんから送られます。
「なるほど~」
坂本くんの友人である糸川くんが間延びした口調で頷きました。
☺︎
現在、3限目。
本来なら今この時間は倫理の授業なのですが、授業担当の先生が体調不良による早退で急遽自習となりました。
自習とは名ばかりで、クラスの大半は教室内を好きに移動して談笑に花を咲かせています。
例に漏れず、私の席のすぐそばには、早川さん、丹生さん、糸井くんなどの面々が集まってきています。
糸井くんが横を振り向きました。
「だってさ、坂本~」
糸井くんの向いた方向へ、視線が集まります。
そこは本来坂本くんの席がある場所より、3メートル後方です。
「……坂本……なんか遠くない?」
「ソッ、ソンナコトナイケド」
「そんなことはあるだろ」
糸井くんがツッコむのも無理ありません。
坂本くんは、教室の後ろにある生徒用のロッカーに椅子の背がくっつくほど下がって着席していました。
ちなみに1、2限目の授業もその定位置にいましたが、先生たちは一瞥をくれただけで特に何も言及することはありませんでした。あ~またなんかやってら、ぐらいの感じです。



