にゃーん、にゃーん、と耳元で鳴く声がした。
たぶん、キヨコだ。
いつも家の縁側でうたたねしていると、キヨコは普段は滅多に聞けない鳴き声を上げて、起こしに来てくれる。
重い瞼を上げると視界目いっぱいに、キヨコの真っ黒な毛並みと、じいっとこちらを見つめるまん丸の瞳が映る。
「ん~? どおしたキヨコ。起こしに来てくれたん?」
にゃー、とだけ返事が返ってくる。
「そうかそうか。ありがとうなキヨコ」
耳と耳の間を軽く撫でてやるとキヨコは、満足そうに目を細めた。
「ほんま、キヨコはかわええな~」
「──その子がキヨコさんですか?」
唐突に横から差し込まれた声に俺は思わず、わっと声を上げた。
起き上がって振り返るとそこには──



